どうも、いちあるです。
今日はカーボンニュートラルの記事について少し話を進めてみたいと思います。
菅元総理が2020年の10月の臨時国会で「2050年カーボンニュートラル宣言」をおこなって以来、やたらとカーボンニュートラルを耳にするようになりましたね…
自動車業界を含む産業界もバタバタとあわただしく、カーボンニュートラルに向けた取り組みを始めたように感じます。
今日の内容を理解していただければ、バイオマス燃料がカーボンニュートラルに必要な理由、そして実際のところ車にいれちゃっていいのか…そのあたりを説明したいと思います。
カーボンニュートラルに向けた自動車メーカの挑戦
100%バイオ燃料??
11月13日、こんなニュースが流れてきました。
5社がカーボンニュートラル実現に向け、内燃機関を活用した燃料の選択肢を広げる挑戦を発表
- SUBARU、トヨタ、マツダがカーボンニュートラル燃料を使用し、スーパー耐久シリーズに参戦
- 川崎重工、ヤマハ発動機が二輪車等での水素エンジン開発の共同研究の可能性について検討を開始
- トヨタの水素エンジン車両が「スーパー耐久レース in 岡山」に参戦。新たに福岡市から水素を供給
引用元:トヨタ自動車
そう!カーボンニュートラルに向けた取り組みは、EVやハイブリッドだけではないんです。
今回とくに、筆者が注目したのはマツダの取り組み、「スカイアクティブディーゼル」を搭載したデミオでレースに参戦。しかも燃料は100%バイオディーゼル燃料を使用するそうです。
なぜ、注目したかというと…
バイオ燃料に対して良いイメージがないからです…
カーボンニュートラルの正体とは
そもそもカーボンニュートラルって何だと思います?
半分正解で半分間違いですね…
温室効果ガスである二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスこれらを全体としてゼロにすることがカーボンニュートラルなんです。
全体としてとは、温室効果ガスを排出した量から、吸収量と除去量を差し引いた値がゼロにすること。つまり、温室効果ガスの排出をゼロにすることではないんですね…
バイオ燃料とは
バイオ燃料とは、動植物などから生まれた資源を利用して作る燃料のことを言います。
ガソリンの代わりになるバイオエタノール、軽油の代わりになるバイオディーゼル、バイオガスなど…これらすべてバイオ燃料です。
バイオ燃料のアドバンテージは、サスティナブル(つまり枯渇しない持続可能)な資源であるという点、そして植物由来であるといったところだそうです。
しかし、いくら植物からできているバイオ燃料であっても、軽油燃料と同様、燃焼の過程で二酸化炭素が生成されてしまいます。
そんな声が聞こえてきそうですが、そもそもそこが問題ではないんです。
植物由来という点で、もっとも重要なことは…
そして、植物が育つためには二酸化炭素を吸収し、酸素を吐き出す光合成が必要で、そういった意味では植物が大気中の温室効果ガスを吸収してくれています。
というところです。
つまり、いいかえればバイオ燃料を製造する過程で二酸化炭素が吸収されているため、使用(燃焼)過程で二酸化炭素が排出されたとしてもプラスマイナスゼロですよね!
まさしくこれがカーボンニュートラルという事になります。
ユーグレナ社製のバイオ燃料
今回マツダが使用したユーグレナの燃料ですが、何がすごいって100%バイオ燃料であるというところ。
バイオ燃料というと、家庭での廃油などを使用した再製油が多くでまわっており、ディーゼルエンジンに数%混合して使用するという方法が当たり前でした。
というのも、バイオ燃料の原材料もバラバラで品質にもばらつきがあったため、エンジンにダメージを与えてしまう可能性があったからだと筆者は考えていました。
しかし!何と、このユーグレナ社製の次世代バイオディーゼル燃料は、品質は国内軽油規格に準拠しているため、ほぼ軽油と同等。
そして、いすゞとの共同試験でもその性能が確認されたというんです。
参考:ユーグレナホームページ
バイオ燃料が与える車への影響
バイオ燃料を車に給油してこわれないのか
2000年代の初頭のバイオ燃料では、短期的なエンジンへの影響として、エンジンの始動不良といったトラブルが多かったようです。
原因としては、燃料フィルターのつまりによる燃料の圧送不良。精製不良が原因で、不具合車からグリセリンなどの物質が抽出されたとのこと。
バイオ燃料は製造規格がガソリンや軽油ほど厳しくないから品質が一定ではないですからね…、一般的に車に入れるとなにが起こるかわかりませんよ…
筆者が、ディーラに勤めていたころ、こんなことをメーカの品証の方から言われたことを思い出します。
筆者が経験したバイオ燃料に関連する不具合
筆者が経験した、バイオ燃料でのトラブルについて簡単にお話をしておきましょう。
かれこれ10年ほど前のことでしょうか、筆者が対応をしたお客様でエンジンから「カラカラ」音がするとのご指摘で対応をしたのですが、診断を進めると完全にエンジン内部がダメでした。
ん…でもまだ50,000km程度しか走行していないのに…こんな距離で壊れるなんてめずらしいな…
とまあ、最初はこの程度にしか思っていませんでした。
いろいろと診断をすすめた結果、以下のような診断結果となりました。
- 今回の不具合は、DPF(すすの捕集機)搭載車で発生。エンジンオイルの量が異常に増えたため(オイルが燃料で希釈され)、エンジンの燃焼室内部でオイルが燃焼、そしてオーバーランをしてしまった。
- 車のメンテナンスは定期的に実施しており、メンテナンス不良はない。
- DPFを外して確認すると、白色化が進んでいたため溶損の一歩手前であった
- よって、何らかの原因で「すす」の捕集速度が速くなり、「すす」を焼却処理させる頻度が増えたために、エンジンオイルが燃料で希釈されて今回の不具合にいたった。
なんでそんなに「すす」がたまるのか?という疑問は割と早く解決しました。
じつはこのユーザ、バイオ燃料を販売する販売業者さんで、バイオ燃料を車に入れていたんですね…。
ただし憶測で判断はできませんので、いろいろと調査をした結果、やはりバイオ燃料が原因ということになり、残念ながらお客様には有料でエンジンを交換していただくことになりました(指定された燃料をいれなかったため)。
バイオ燃料が悪いといっているわけではありませんが、今の時点では自動車メーカが「バイオ燃料でも平気です」というお墨付き(取扱説明書に載るなど)があるまでは、一般的な車には入れない方がよいです。
壊れてしまっても、保証とならない可能性が高いからです。
まとめ
今日はカーボンニュートラルに対しての各自動車メーカの取り組みと、バイオ燃料について考えてみました。
バイオ燃料の開発がさらに進み、普通の燃料と同等の性質になり、各自動車メーカもその品質に対してお墨付きをもらえる時代が来ると思っています。
電気自動車に対する技術が日進月歩となったいま、内燃機関エンジンの存続が徐々に危うくなってきてはいますが、バイオ燃料の登場が今後の内燃機関エンジンの存続を左右する大きな技術となるとなるでしょう。
そんな自動車がサーキットで気持ちの良い排気音をなびかせて、走りまわっている日を楽しみにしたいと思います。
では、今日はこの辺で!